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2009年1月 5日 (月)

現実を動かす確かな力

湯浅誠の『反貧困 「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書)を読んでいる。

本の感想は、また後日ゆっくり書きたいところだが、新年早々、この本を手に取ったのは、日比谷公園の派遣村の問題があったからに他ならない。

「すべり台社会」という言葉が、派遣労働者に限らず、現在の社会をそのまま言い表しているような気がした。

年末から今日にかけて、メディアが流し続けた派遣村の報道は、本当にこれが高度経済成長を経験した国の光景だろうかと疑うものだった。

大きな公園に派遣労働者が500人も集まって、炊き出しの食事目当てにずらりと並ぶ。

日比谷公園までたどり着けばまだマシだろう。全国で8万人が首切りにあっている。派遣村に集まった人たちは、氷山の一角。これはまだ、問題の始まりに過ぎないのだ。

彼らは、不真面目だから職を失ったわけではない。働いているときも低賃金で、働いているのにお金が貯まらない、残業しているのに手元に残るお金が少ない…。

都合の良い使い方をしてきたくせに、切るときはあっさりと切り、アフタフォローはまったくない。住む場所も貯金もなく、年末年始に寒空に放り出される。

「すべり台」とは、まさに、このことだ。

生活保護制度は、穴だらけだ。彼らが福祉事務所を訪れても、自治体の「水際作戦」が待っている。

「まだ働ける」「若いから大丈夫」「まずは努力して」・・・

ギリギリの状態で働いてきて、足下のハシゴを外されると、一気に奈落の底まで落とされる。奈落の底に落ちるギリギリのセーフティーネットは破綻している。

正規社員だって、派遣労働者のことだからと安心していられない。

派遣が切られるのは、正規が既得権益を守っているからだという暴論がすでにあちこちで見られる。

これまで散々ボロもうけしてきた大企業が、経営が悪化したからといって派遣労働者をばっさりと切って、身軽になろうとするのは、正規社員の人件費が問題なのではなく、株主と経営者の権益を最優先しているからだ。

オバマの言葉がよみがえる。

「メーンストリートが苦しんでいるのに、ウオールストリートが栄えるなど、そんなことあってはならない」

まさに、メーンストリートを切り捨て、ウオールストリートを栄えさせたいだけなのだ。

オイラだって、今ある自分の足下が崩れれば、「すべり台」をあっという間に一番下まで滑り落ちることになる。

おそらく、これからは、派遣か正規かなど、何の意味もなくなるだろう。

これは、政治の問題だ。

偽善者はいつも、貧困を政治の問題とせず、みんなで支え合おう、自分の問題であって、政治の問題にするなと言う。

派遣村を実現した力は、政治に他ならない。

都立公園のど真ん中に派遣労働者の年越しテントが現れる、これは行政にはできない荒技だ。青島都政時代、新宿駅西口のホームレスを強制排除した光景を思い出していただきたい。地元の公園に野宿している若者がいたら、普通、警察に排除される。

その後、派遣村だけでは対応しきれず、厚生労働省の講堂を開放したのも、もちろん厚労省の官僚が福祉の心を発揮したわけではなく、そこに政治の力が働いたのだ。

派遣村には、野党の大物政治家が勢揃いした。

パフォーマンスと言えば、それまでだ。

でも、パフォーマンスだろうが、そうでなかろうが、現実を動かす力になったことは確かなのだ。

政治家が太鼓を叩けば、メディアは踊る。

メディアが連日報道しようとすれば、時の政権与党は火消しに回る。

だから、現実は動く。

結果として、数多くの派遣労働者が凍死せず、餓死もせず、年を越した。

オイラは、解散しようがしまいがどっちでもいいと思う。解散権は、麻生首相が握っている。それは間違いない。

どういう政局が待っていようと、現実を動かすことができなければ、何の意味もない。

政権交代をしようがしまいが、どっちでもいい。新しい政権がよりマシかどうかなど、やってみないと分からない。

今、政治に求められているのは、現実を動かす確かな力だ。

そういう意味では、与党だろうが、野党だろうが、どっちでもいい。

力のある政治家を一人でも増やす、そこに尽きるのだ。

自民か民主かなんて、そんなくだらない選択肢は必要ない。マスコミはそういう政権選択が大好きだから、勝手にやらせておけばいい。

オイラは政治は大嫌いだが、そこはハッキリと言える。

動いてほしいのは、政局でも、政策でもない。目の前にある現実なのだと。

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