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2008年10月 2日 (木)

コピーを繰り返すうちに、元が何だったのか分からなくなったオカルト作家の悲劇

さっそく買ってしまった。

『大東京の地下400年99の謎・帝都の地下国家機密の歴史を暴く』(二見文庫)

地下のオカルト作家・秋庭俊先生が世に放つ、誰かの本を丸写しした秋庭本を、自ら丸写しした、いわば、クローン秋庭本である。

すでに語り尽くされた話題ばかりで、げんなりしてしまうが、今夜のところは、こんな指摘をしておきたいと思う。

例えば、こんな文章がある。

当時の陸軍航空部が第一次世界大戦で分捕ったドイツ製のカメラを使い撮影した航空写真に、建築家の中村順平が設計した都市計画を書き込んだ地図だ(P2)

この本に掲載されている地図は、中村順平の『東京の都市計画は如何にすべき乎』という本に掲載されていて、大正時代に発行されている。

仮に、この時代にカメラで航空写真を撮影したとしよう。もちろん、東京全体を1枚の紙に焼くことなど不可能だ。何枚に分かれるか、たくさんの写真を並べることになるだろう。セロテープでつなげたのだろうか。そんなものないよね。のりでペタペタと貼ったとして、上から都市計画を書き込むんだよ。もちろん、当時はコピー機など存在しない。

ちなみに、この地図は、最初はカラーだった。中村順平が、ロシア人の女性の家の一室をアトリエとして借りて、製図板を持ち込んで製作した。それを国民美術協会の帝都復興展に出品したのだ。『東京の都市計画を如何にすべき乎』は、その解説本というわけだ。

航空写真をベタベタとつなげて、1枚の都市計画図に仕上げる。こうやって考えていくと、不可能ってことが分かるだろうか。

中村順平は、地図の上に都市計画を描いたのだよ。

『東京の都市計画を如何にすべき乎』の実物を手にとって、ようやく分かった。この地図には、当時の山手線や、まだ完成していない荒川が描かれている。

想像力とほんのちょっとの探求心があるだけで、これは嘘だと分かる。

こんな文章もある。

今、車が走っている道路の地下に、400年以上前の「街道」が埋まっている、といっても、あなたは信じないかもしれない。

戦後の経済成長とともに生まれた高速道路は別として、一般道は多少の拡幅はあっても道路が上下に重なっているなんてことはありえない」(P16)

これを読んで、そうだなと思った人はいるだろうか。

東京のあちこちで再開発が行われるたび、遺跡の調査も行われる。東京はもともと人口が多かったから、あちこちから遺跡が現れる。当たり前だ。盛り土をしているのだから、地下から街道が出てくるなんて当然で、それに驚いている人などいない。しかも、それをもって、「一般道路が上下に重なっている」なんて、意味不明だ。

埋まっている道路と、現代の地盤にある道路を並べて、「上下に重なっている」って、小学生でもそんな文章は書かない。

こんな文章もある。

利根川が東京湾から銚子沖に河口を変えたように、水路が変更されて水が流れなくなったところや、川をせきとめてつくられたのが「上水」だ。(P22)

上水というのは、水がないから作るのだ。最初から川があるなら、その川の水を使えば良い。わざわざ川をせきとめる必要などないし、地下に埋める必要もない。

玉川上水は、四谷大木戸から市中へは、地下を流れている。そのルートは複数あったことが分かっている。南北線で四ッ谷駅の建設場所の遺跡を調べたところ、昔の玉川上水も発見されている。それはまた別の機会に書こうと思うが、大事なことは、羽村から四谷までの長大な区間、玉川上水は川のない場所に水路を掘り、地上を流れているってことである。

ちなみに、千川上水も、青山上水も、神田上水も、三田上水も、当時は地上にあった。

こんな文章もある。

1604(慶長9)年に家康が建設計画を発表した江戸城は、それを証明している。(P33)

「発表」したんだそうである。家康が。

誰に発表したのだろうか。当時はマスコミなんていないけど、瓦版はいたのかな。

秋庭先生は、歴史物の書き方に慣れていない。だから、現代ならあり得るが、当時はあり得ないことを想像できない。時代劇の主人公が、「ファイト!」と口走ったらおかしいが、秋庭先生は、それと似たようなことをこの本でやっている。

秋庭本は、それほど難しい知識がなくても、まず普通に読めば、おかしいと分かる。

ただ、それほど未熟な書物にもかかわらず、秋庭本に翻弄される信者が多いのも確かだ。

何が真実か分からない世界ということだろうか。

今回、秋庭先生は、この本で必死に五角形を探している。今の段階では流し読みだが、前作からかなりの時間が経過したが、彼がやっていたことは、森鴎外の『東京方眼図』とにらめっこをし、ひたすら定規で五角形を引いていたということが分かった。ジャーナリストが本来すべき取材活動はまったく行われておらず、自室に籠もって、地図の上に線を引っ張っていたのだ。

最初にオイラは、この本は、秋庭本のクローンだと評した。

昔、『ルパン三世』というアニメがあって、クローン人間を題材とした映画が公開された。

不老不死のためにマモーがクローン人間を作り出すという話だが、クローンを繰り返していくうちに、どれがオリジナルなのか分からなくなる。自分は果たして、オリジナルなのか、クローンなのか。

秋庭先生も、最初はまさか五角形を探そうなんて思っていなかったはずだ。ところが、自分の立てた仮説を立証するために、仮説を積み重ねているうちに、「直線」とか「五角形」という型にはめ込んで、極秘地下道を立証しようと始めた。そのうち、五角形自体を証明するために、今度は別の歴史をはめ込んだ。

クローンを繰り返しているうちに、秋庭先生自身が、何を立証するために著作を書き始めたのか、すっかり見失いつつある。

そして、「隠された地下網」が証明されてもいないのに、今回はひたすら「五角形」を証明するために奔走している。

それをネタに本を出版する出版社の倫理とは、いかほどのものなのだろうか。

(関連サイト)

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コメント

早速の記事作成、お疲れ様でした。
私も、中々手が空かなくて、次が書けない状況で、明日位は何とかしようかなと、思っている次第。
いやはや、新ネタと言えば、ミソもクソも一緒の五角形城郭ネタ、我が国における陵堡型城郭の最盛期が19世紀中庸だったこと。例えば、大阪港天保山がどんな格好だったか?何の説明もなし。そんなオッサンが、築城術を説くナンセンス。
新噴飯ネタ期待の当方としては、「利光送電図」なんか、向きを変えて載せてあるんで、新版が出たのかと思っちまいましたぜ。
しかし、この中村順平ネタをはじめとする盗人行為何とかならんのかしら?

投稿: 陸壱玖 | 2008年10月 3日 (金) 01時45分

こんにちは。

最近見ないと思ったら、図書館で城郭関係の書籍を読みあさっていたんでしょうね。今は都立中央の東京室が閉まっているから、どこを根城にしているのやら。案外、開運坂の近くだったりして。

そういえば、あの近くには最近…。

…(笑)

投稿: mori-chi | 2008年10月 3日 (金) 14時17分

こんな本も出たんですね~。クローンで量産ですか(笑)。
買いたいのですが、ただいま失業中で、健康保険料を払ったら貧しくなってしまったので買えません…。
しかし、家康が発表って…記者会見でもしたんですかね(^^ゞ。
開運坂は近いんでブラブラしてたら、そのうち先生に会えるかも☆

投稿: こぐまりあん | 2008年10月 3日 (金) 23時54分

こんばんは。失業中ですか。いやいや、買う必要ありません。そのうち図書館に入るでしょうし。

何たって家康ですからね。江戸幕府の広報が報道各社にファックスして、記者クラブで会見しちゃうんでしょ( ´艸`)プププ

投稿: mori-chi | 2008年10月 3日 (金) 23時57分

やっと、「はじめに」をクリアーです。

http://www3.atwiki.jp/619metro/pages/123.html

色々と確認しながら書いていくと、「果たしてこう書いて良いのかな?」と言う、何でも一層の疑問と言うものに突き当たります。
中村順平、果たして荒川放水路を認識していたのかとか、
新たな展開が見えることがあります。
秋庭さんと編集屋御一統は突き当たらん見たいですけど(笑
秋庭さんの駄ビングの御蔭で、過去記事を引っ張ってくれば良いので楽かと思いきや、結構この新しい展開に心引かれちまうのが困りもんですね。

投稿: 陸壱玖 | 2008年10月 6日 (月) 00時04分

おはようございます。

そうなんですよね。中村の都市計画では、荒川が、中途半端に完成しているのが分かるんです。これを見て、地図なんだと確信しました。自分の書きたいことしか書かない秋庭先生と違って、普通の脳みそを実装している人なら、過去の資料から、いろんなイメージを導き出すものです。

投稿: mori-chi | 2008年10月 6日 (月) 07時09分

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