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2008年8月29日 (金)

秋庭本初の漫画化『実録コミック・東京地下迷宮の謎』(イースト・プレス)を読んだ。

虚言癖のある人は、たった1つの嘘を取り繕うために、別の嘘をつき、それを繰り返して、取り返しのつかない事態まで陥る。

仮説は、科学的に実証されない限り、仮説以上の何者にもなりえないが、実証されない仮説を「事実」として積み重ねると、延々と仮説は真実から遠ざかってゆく。

地下のオカルト作家・秋庭俊先生が起死回生の漫画本にチャレンジ。

『東京地下迷宮の謎』

今のところamazonでは取り扱っておらず、コンビニのampmでしか入手できない。

例えば、35ページにある「頓挫した『容疑者護送地下鉄』計画」の項である。

「ミスター検察」と言われた伊藤栄樹氏が語った護送地下鉄の極秘計画。秋庭先生が何度も自著で紹介してきたネタだ。

【秋庭系東京地下物語2007】(第2話)「極秘」護送地下鉄の妄想

上記のエントリーでオイラが詳しく解説している。

秋庭先生は、一貫してこの護送地下鉄計画を、伊藤氏の「作り話」と否定してきた。

伊藤栄樹は、極秘地下鉄は千代田線の線路を走るというつくり話をしている。その計画が頓挫したというのも、私はつくり話ではなかったかと思っている。そしてもう一つ、護送地下鉄ということもつくり話だったはずである。(『新説東京地下要塞』講談社+α文庫、P89)

今回の漫画本では、こう書いている。

専用地下鉄を使うなら話は別だが、営業している千代田線では「極秘」といっても無理がある。霞が関の地盤の問題は、ずっと以前からわかっていたはずである。話が進んでからわかった、というのは笑い話である。(P36)

やはり「つくり話」と突き放しているが、

引き込み線は、国会議事堂前庭の地下を走る「8、9号線連絡側線」、有楽町線の車両を千代田線北綾瀬駅にある車両工場で検査するための線路につなげることになった。…(中略)…私は、「8、9号線連絡側線」につなげる引き込み線のルート、つまり、どの地下道を使うかで暗唱に乗り上げた、と考えている。(P36)

突然、「8、9号線連絡側線」という造語が登場した。おそらく、千代田線霞ヶ関駅と有楽町線桜田門駅を結ぶ「8・9号連絡線」のことだと思うけど、「側線」という怪しげな単語をくっつけている。

秋庭先生は、他の著書で、こんなことも書いている。

8・9号線連絡線というものを見て、振り出しに戻されたような気分になった。有楽町線の桜田門駅というのは、東京地裁にも近く、検察庁からは目と鼻の先になる。この連絡線を使えば、千代田線へと乗り入れられる。とはいえ、ミスター検察の極秘地下鉄計画は、頓挫したからこそ秘話になったはずで、ツジツマが合わなくなってきていた。(『帝都東京・隠された地下網の秘密』新潮文庫、P153)

秋庭先生自身が、ツジツマが合わなくなっている。

最初、極秘護送地下鉄そのものが「つくり話」と言っていたのに、今度は護送地下鉄が頓挫した理由が「つくり話」という論理になった。

だが、護送地下鉄が「つくり話」ではないなら、8・9号連絡線を通った護送地下鉄は、千代田線を通ることになる。そうなると、「営業している千代田線では、『極秘』といっても無理がある」という一文に矛盾が出てくる。

結局、秋庭先生が何を迷っているのか、読んでいて分からない。

どうして突然、8・9号連絡線が登場したのか。こいつが出てくる限り、極秘地下鉄は「営業している千代田線」を通らざるを得なくなる。

秋庭先生にどんな心境の変化があったのかは謎だが、おそらく、ネットの片隅のあるブログを読んで、こっちのほうがリアリティがあると思ったのだろう。

次に、101ページにある「地下鉄史上最大の冠水事故が起きた理由」の項である。

【秋庭系東京地下物語2007】(第3話)水没した赤坂見附駅の妄想

上記のエントリーを読むと、事の顛末がよく分かると思う。

正直言って、漫画本のこの項は、読んでも意味がさっぱり分からない。

弁慶壕の増水した水は、地下トンネルを通り、東京湾に注がれた。でも、途中で水が逆流して、赤坂見附駅が冠水した。ついでに南北線の溜池山王駅も水没した。

漫画本の趣旨は、こういうことだと思う。

ところが、漫画本はこうも書いている。

南北線の工事について帝都高速度交通営団は監督官庁である建設省(現在の国土交通省)に覚書を提出していた。それには、「大雨などで弁慶壕が増水して溢れそうになったとき、「工事が終了していなくても水を地下トンネルに流す」といった内容のことが書かれていた。(P101)

そして、水は実際に増水し、トンネルに水が流され、作業員を地上に避難させたが、機器類は間に合わなかった。

ちょっと待て、水が流れたのは、地下トンネルなのだよね。南北線のトンネルではない。作業員は、別の地下トンネルに水が流れたのに、どうして地上に避難し、機器類は濡れなければならないのか。

ところが、どこで起きたのかわからないが、水が逆流して丸ノ内線赤坂見附駅から国会議事堂駅までが冠水したのである。(P101)

おかしい。南北線の工事に関連して、営団と建設省は覚書を交わしたのに、水に浸かったのは丸ノ内線だった。理由は、水が逆流したからと書いている。

さらに読み進めると、工事中の溜池山王駅も水没したと書いている。

意味が通じていない。

そもそも、この話、おかしな点がたくさんある。

南北線の溜池山王駅が開業したのは、1997年9月30日である。2000年7月14日の時点では、溜池山王駅はすでに営業しているが、南北線が水没したという話は聞いたことがない。この時点で工事中だった目黒・溜池山王間は、水が流れる方向が東京湾とはまったく別になるので、仮に工事中のトンネルに水を流すとしても、意味がない。

じゃあ、建設省と営団は、いったい何を覚書したのか。

水が逆流したというなら、南北線だけでなく、丸ノ内線についても覚書が必要だ。もちろん、銀座線も必要になる。

ところで、一貫して「丸ノ内線」が強調されているが、駅の構造上、銀座線もいっしょに水没する。

何故、こんなに支離滅裂になったのか。

秋庭先生が、このネタを最初に披露したのは、公式サイトの「近況報告」である。

平成5年8月、赤坂見附駅が冠水して地下鉄が大混乱しました。駅の階段に大量の水が流れている映像を記憶している方も多いかもしれません。この日は赤坂見附駅がホームの高さまで水に埋まってしまい、冠水事故というより水没事故とでもいうべき事態でした。当時の営団地下鉄は、この事故の原因を「大雨のため」と発表しただけで、いまもって詳細を伏せていますが、このたび、その真相がわかりました。

 たしかに事故の原因は大雨といえば大雨ですが、あの大量の水は皇居のお濠の水で、それを赤坂見附まで運んできたルートは、なんと、南北線のトンネルでした。また、その詳細が伏せられた理由は、どうやらこれが単なる不慮の事故ではなく、多分に人為的な要素があったからのようです。

 ただ、私が語れるのはここまで。このさきはマスコミの仕事かと思います。

まず、事故が起きた時期が、「平成5年8月」、1993年8月になっている。

年代が変わることで、どうしようもない矛盾が出てくる。1993年に南北線の溜池山王駅は開業していないから、南北線のトンネルに水が流れても特に不思議ではない。ところが、2000年ということになると、すでに南北線は営業運転中で、丸ノ内線どころか、南北線も水没したという話になってしまう。

にもかかわらず、2000年にしなければならなかった理由は、ネットの片隅にある某ブログで、1993年に起きた赤坂見附駅の水没事故の顛末を、事細かに解説されてしまったからだ。

2000年にしてしまったことで、南北線に水が流れるというシチュエーションがあり得なくなってしまい、「地下のトンネル」というもう1つの架空のトンネルを妄想した。

ところが、水が地下のトンネルを流れたとなると、覚書のやりとりが意味がなくなる。だから、「工事中だった溜池山王駅も水没して工期が大幅に遅れた」という一文を入れてしまい、ますます分からなくしてしまった。先述したように、2000年の時点で溜池山王駅は開業している。

ちなみに、「水没事故」があったという7月14日のおよそ2ヶ月後、2000年9月26日には、南北線溜池山王・目黒間も無事開業しており、工期が遅れたという事実もなさそうだ。

仮説に仮説を積み重ねると、支離滅裂になる。しかも、最初の仮説がゆらいでいるのに、別の仮説を肉付けして補強しようとすると、仮説は空洞化する。

浮気の言い訳と似ているような気がするが・・・(笑)

他にも突っ込みどころは満載だが、今日のところはこのくらいにしておこう。

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コメント

小林某氏的に言うと、引用かどうか微妙なんだけど、マンガの記述を批判するとなると、どうしてもページ単位で複写せにゃ何が変かが判り難い、と言うことで第一弾

http://www3.atwiki.jp/619metro/pages/119.html

「乞御高評」と昔は執筆者への贈呈本とかには雑誌でも青スタンプで押してありましたっけ。

投稿: 陸壱玖 | 2008年9月 1日 (月) 00時21分

おはようございます。

さっそくの検証、お疲れさまですm(_ _)m

何だか支離滅裂な本になっちゃいましたね。特に文章部分は、検証以前に意味が分からない記述が多い。秋庭先生の脳内ではすでに、自分のネタの内容さえ分からなくなっているようですね(;^_^A

そういえば、『新説地下要塞』文庫版あとがきで、秘密の地下網を見てきたぞ!って自慢していたのは、案外この漫画本の打ち合わせで、担当の漫画家と編集さんとで、秋庭系スポットを歩いただけかもしれないなと妄想しています。

それにしても、森鴎外には笑った(笑)

投稿: mori-chi | 2008年9月 1日 (月) 08時07分

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