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2007年5月21日 (月)

【秋庭系東京地下物語'07《秘密》】(第4回)国立国会図書館の「複雑な機能」の謎・前編

P1020574 国立国会図書館である。国会議事堂のすぐ横に位置することから、どうも敷居が高い気がするが、思ったよりも使いやすい図書館である。ほとんどの書籍は閉架式で、パソコン端末から申請をしないと読めないが、日本で発行された書籍は例外なく納本されるので、自分の読みたい本がなかったという経験はない。国会議員や省庁の職員以外には貸し出しを行っておらず、マナー違反の利用者が返却を遅らせて、なかなかお目当ての本にお目にかかれないこともない。

大は小を兼ねる、という。かつては地元の図書館をよく利用していたオイラだが、最近は何を読むにも、永田町まで出てしまうようになった。

オイラにとって便利な国立国会図書館だが、地下の都市伝説の権威・秋庭俊先生にとっては、陰謀があふれる地下構造物ってことらしい。おそらく、この図書館がミステリアスに感じるのは、その「複雑な機能」が原因なのだろう。

今年は、国立国会図書館法の施行から60周年を迎える。

今回は、国立国会図書館の「複雑な機能」の謎に迫る。

最初にお断りしておこう。秋庭先生は、複数の自著で、国立国会図書館について論じておられる。今回、いろいろと資料を調べてみたが、

秋庭先生、いくら何でも、これはヒドすぎる。

国立国会図書館から訴訟を起こされなかったのが不思議なくらいだ。本当は、この企画は、秋庭本のどこが違う、ここも違うという内容にはしたくないのだが、国立国会図書館についてはほぼ全編にわたり妄想でしかないので、今回は少々、言い方がきつくなるのをご容赦いただきたい。

戦後、日本国憲法の制定により、新憲法のもとに国会が国権の最高機関となると、国会議員の国政審議のための調査機能を備えた国会図書館の設置が求められてきた。また、一般国民からの要望も強く、内外で国会図書館設立の要望が高まった。こうした背景から国立国会図書館法が1947年4月30日に公布され、5月3日の新憲法施行とともに施行された。

とはいえ、器がなければ、図書館は運営できない。当時の日本は焼け野原である。そこでまず、庁舎を建築するまでの間の仮庁舎として旧赤坂離宮の一部を利用することで、1948年6月5日に開館した。

赤坂離宮は、太平洋戦争後、皇室財産から国家財産に移管され、さらに国立国会図書館の中央館として広く一般に開放されることになった。当時は、この壮麗な由緒ある大建築が、わが国の文化の殿堂として世界に誇る文化国家の基礎となり、源泉となるべき国立国会図書館の象徴であるかのように思われた。(略)しかし、一見非常に広い建物のように思われるが、回廊が沢山あり、壁の厚さが1メートルもあるので、利用できるスペースは延べ坪の半分以下であったし、閲覧のための座席数は、この離宮内ではわずか314席しかとれなかった。(『国立国会図書館五十年史』より)

あまりにも図書館には不向きだったのだ。図書館として能率的に運営することよりも、むしろ赤坂離宮としての保全が先立ったのである。事務室は1階に置き、2階は資料室と閲覧室。図書館としての使用面積は約200坪しかなく、地下室や廊下をできる限り使用して、スペース不足を補ったのだそうだ。

さて、秋庭先生の登場である。

国会図書館の赤坂離宮分室は、いまの首都高新宿線のトンネルの上にあった。敷地が狭かったことから地下室を利用していたという。遠いうえに狭いにもかかわらず、国会図書館はここからスタートしている。(『帝都東京・隠された地下網の秘密』新潮文庫、P97)

赤坂離宮は、分室ではなく、仮庁舎である。トンネルの上にはない。地下室は利用していたが、トンネルとは関係ない。

GHQの占領下、赤坂離宮のトンネル内に移転している。(『帝都東京地下の謎86』洋泉社、P136)

意味不明。図書館は、赤坂離宮の建物を利用しており、トンネルではない。

国会図書館が発足した当時は、新庁舎の敷地として旧参謀本部跡の2万3000坪の土地が用意されていた。今の憲政記念館のある場所である。この場所に国会図書館を建設することは、議事堂の品格を台無しにする恐れがあるという理由で、建設敷地として最も適切な場所を、旧ドイツ大使館跡を主要部分とする約1万2000坪の区画に決めた。

当時敗戦国ドイツの財産であるこの土地は、GHQの管理下にあり、GHQに土地返還の交渉を行ったところ、許可された。1948年、現在の敷地に国会図書館を建設することが決まった。

その後、国会図書館はいまの国会前庭に移転した。(『帝都東京地下の謎86』洋泉社、P136)

国会図書館が国会前庭の場所に移転したという事実はない。現在の憲政記念館付近にあったのは、国会図書館の三宅坂分室である。これも、現在の敷地に庁舎が建設されるまでの仮の分室で、赤坂離宮までの距離があることから、議会関係の調査機能をここに置いていた。

国会図書館を建設するにあたって、大成建設はここの地質を調べている。報告書によると、このあたりは地下四〇メートル付近に固い地盤があり、そこに建築の底をベタにのせれば、地震などの影響はあまり受けないだろうという。(『帝都東京・隠された地下網の秘密』新潮文庫、P97)

『五十年史』によると、国会図書館の新館を設計する際、書庫は通常の2倍強の荷重に耐えられる必要があり、これを支える地盤を調査したところ、深さ28メートル以深に東京礫層という非常に硬い洪積層があることが分かり、この層まで掘り下げて、その上に建物全体を置くことになったということである。もっとも、これは地下8階まである新館の話で、もっと浅いところまでしか書庫のない本館は関係ない。無理矢理地下40メートルにしたくて、秋庭先生がねつ造したものと思われる。

『国会図書館三十年史』には、第一期工事終了時のフロアーの数、面積などが記されている。それによると、一階の下には中地階、地階があり、その下には第三層、第二層、第一層とされていて、この層には「既設」と書かれている。(『帝都東京・隠された地下網の秘密』新潮文庫、P97)

実際に『三十年史』の該当部分を読んでみたところ、1階にも、2階にも、3階にも、「既設」と書かれた部分が存在した。もしも、秋庭先生が妄想するように、「既設」が、ドイツ大使館の防空壕を再利用したものであるなら、地上に建っているあの図書館の庁舎は、戦前のドイツ大使館の建物を改築したということになる。

つまり、「既設」とは第1期工事分、「新設」とは第2期工事分である。

おそらく半分以上は立入禁止の区域で、間違ってその区域に入ると、職員がものすごい勢いで飛んでくる。地上の建物は正方形だが、地下に行くと、あるはずのない方向にも扉がある。一度、そんな扉がふと開いて、機械音が聞こえてきた。かなり大きな空間があるような響きだった。(『帝都東京地下の謎86』洋泉社、P136)

憲政記念館と同じように、壁のなかにも階段がある。図書館の職員は利用者と同じエレベーターを使っているが、カウンターの中にもエレベーターがたくさんある。国会議員専用なのかもしれない。(『同』、P137)

想像を働かせていただきたい。皆さんは、「あるはずのない方向」がどっちのことか分かるだろうか。敷地は四角い。そこで、あるはずのない方向があるとしたら、どこのことだろうか。仮にどの方向に扉があれば、「ありえない」と思うだろうか。180度、どこに扉があっても、別に不思議ではないと思わないだろうか。この言葉でまず、これが秋庭先生の妄想であることが分かった。

扉が開いて、機械音が聞こえてくると、どうして「かなり大きな空間がある」ことが分かるのだろうか。そもそも、その扉が開いたのは、何故だろうか?秋庭先生はそこで、いったい何をしていたんだろうか。「立入禁止」なんだよね?不法侵入?

カウンターの中には、確かにエレベーターがあるが、「たくさん」はない。国会議員専用であることは、ありえない。だって、書庫に通じていて、職員が利用するのだから。議員がそんなエレベーターを利用する必要はない。

国立国会図書館の本館の一般利用者向け出入り口は、真正面ではなく、憲政記念館側にある。

P1020575 ここが、国会議事堂側にある本館正面玄関。この玄関を入ると、正面には、エレベーターがある。このエレベーターで6階に上がると、ダイレクトに議員専用のフロアに出ることができる。

この建物の「複雑な機能」とは、国会議員のための図書館として、議員の依頼に応えて調査研究する機能、国会議員自身が調査研究のために利用する機能などと、国民のための図書館として、国民が誰もが気軽に利用できる図書館の機能と、混在しているところである。

だから、館内は、国会議員と一般利用者の導線が重なることがないような配慮がされていて、区画がハッキリと分かれている。

議員専用のフロアは、本館6階。議員閲覧室、議員研究室がある他、休憩談話室なんてのもある。2つある談話室のうち、1つにはテレビ・ビデオが設置されていて、国会審議の中継放映が可能になっているそうだ。

本館6階には、一般利用者向けの食堂がある。2つの業者が入っているが、最近そのうちの1つが、何十年という歴史に幕を閉じ、新しい業者になった。どちらも、安くて美味しい食事を用意してくれている。売店もあって、何故か靴まで売っているところが、このフロアのおもしろいところだ。ここも、議員専用の食事フロアがあって、一般利用者と鉢合わせすることはない。

ちょっと豆知識を。

『国立国会図書館三十年史』に、本館の全フロアの平面図と断面図が掲載されている。地階は、中央に書庫があり、その周囲を機械室が取り巻いている。おもしろいのは、職員の厚生関係の部屋として、ピンポン室、休憩室、理髪室、美容室、売店、浴室などを設けているらしい。

これは、建設当時の資料だが、現在も本館のエレベーター前にあるフロア別の案内を見ると、地階に理容室と美容室が表示されている。どうやら、ここは立入禁止ではないらしい。ピンポン室がどうなっているかは、国会図書館の職員に聞いていただきたい(笑)

ちなみに、国会議事堂からの地下道はない。

残念。

何かの折に国会図書館に行ったときは、本館の外の立て札にも目をとめていただきたい。非常時の避難経路が書かれているが、どれが経路なのか、さっぱり分からない。少なくとも地上にはそのような経路はないと思う。(『帝都東京地下の謎86』洋泉社、P137)

秋庭先生も、オイラと同じで、地図が読めない方向音痴らしい。国立国会図書館にお越しの際、もしも災害などがあったら、どうか館内外の案内表示を信じて、冷静に避難していただきたい。

次回は、国立国会図書館本館の建築設計の懸賞募集について検証する。

(つづく)

【秋庭系東京地下物語'07《秘密》】

(第1回)斜に構えたアイツの謎

(第2回)首相官邸のトンネルの謎・前編

(第3回)首相官邸のトンネルの謎・後編

(第4回)国立国会図書館の「複雑な機能」の謎・前編

(第5回)国立国会図書館の「複雑な機能」の謎・後編

(第6回)憲政記念館の「壁の中の階段」の謎

(第7回)国会議事堂の「隠された地下」の謎・その1

(第8回)国会議事堂の「隠された地下」の謎・その2

(第9回)国会議事堂の「隠された地下」の謎・その3

(最終回)国会議事堂の「隠された地下」の謎・その4

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