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2007年3月18日 (日)

【秋庭系東京地下物語2007】(第5話)東京メトロ有楽町線の妄想

Ikebukuro1 こんなところに、どうして地下道があるのだろう。初めて通ると、たいていの人は、そんなことを感じる。

ここは、東京メトロ有楽町線の池袋駅東側にある地下道。駅の改札口を出ると、西武百貨店の地下を通り、まるで、ここだけ独立したような空間がある。地下道の開放時間は、7時から21時までと決まっている。夜中に使う人がいるとは思えないが、昼間に使う人がいるかと言えば、かなり閑散としている。

東京メトロ有楽町線は、高度経済成長期の真っ直中に建設が決まった。当時、丸ノ内線の混雑が深刻で、その救済路線として、銀座線のバイパスとなる半蔵門線といっしょに、緊急に整備すべき路線に決まったのだ。だが、この有楽町線の建設は、一筋縄ではいかなかった。池袋駅から西では、上を通る都道の反対運動が勃発。建設を急がなければならない一方で、急ぐからこその矛盾も抱えることになる。

そんな有楽町線にある、こんな不思議な地下空間。思えば、有楽町線にはもったいない空間が多い。わざわざ有楽町線の車両を綾瀬の車両基地に送るための連絡線や、小竹向原から池袋までの複々線や使われていない駅…。ずいぶん贅沢なつくりだなあと思うのは、オイラだけなのだろうか。

地下の都市伝説の権威・秋庭俊先生は、この有楽町線に平行して、補助55号線という地下道があるという妄想を炸裂していた。結論から言えば、そんな地下道はないのだが、有楽町線は、様々な都市伝説を生み出すだけのツールが満載の路線なのかもしれない。

今日は、東京メトロ有楽町線の地下道の秘密に迫る。

Ikebukuro2 この地下道、有楽町線池袋駅のコンコースの東端から入ると、明治通りを渡り、狭い区道の下にのびている。この真下には、有楽町線が走っていて、地下道が途切れたあと、有楽町線のトンネルは公園の下をくぐり、東池袋駅へと向かう。

この地下道の途中には、右にあるようなすぐ隣接するビルの地下との入口を塞いだらしき壁もある。秋庭系マニアなら、誰もが妄想をかき立てられる壁だが、おそらく、この地下道ができた当時、ここは隣接するビルとつながっていて、人の行き来もあったのであろう。

Ikebukuro5 かと思えば、左の画像のように、ビルの地下と今でも直結していて、お店が営業しているという例もある。ここは、私有地の民間のビルに地下道への出入り口があって、ビルの中を通り、この地下道へと抜けることができる。看板が地下道まではみ出しているのはご愛敬だろう。邪魔にならないくらいに、この地下道は幅広く、その割に通る人も少ない。

戦前からあった?

それは、絶対違う。だって、このお店は、戦前からあったわけじゃない。隠されていたのでは、営業できない。

数ある東京メトロの地下道でも、こういうタイプの地下道は珍しい。地上から見てみると分かる。

Ikebukuro4 奥に見えるのが、池袋駅にある西武百貨店。奥から手前にのびている道路が、区道。この真下に、地下道が通っている。さらに、その下を有楽町線が通っている。通常、こういう場所を通る際には、シールド式の掘削になるケースが多いかもしれないが、ここでは開削で掘っている。

営団が作成した『有楽町線建設史』を調べてみたら、やはり、この区間は、難工事だったことが書かれていた。

それによると、この区道の延長は、約190メートルで、幅員12メートル(車道6メートル、歩道片側3メートル)と狭く、建物に近接施工となり、かつ基礎杭のない建物や基礎杭の浅い建物などの間で、施工上の難しさとともに、沿道折衝にも神経を使う場所だったと伝えている。

それに、この区間を過ぎると、公園と民有地の下を通り、東池袋に至るのだが、その沿道に産婦人科病院があり、工事期間中の営業休止問題や開通後の振動・騒音の影響で営業廃止の可能性があるなどの理由で、強く路線変更の要望があったらしい。さらに、相続の紛争も加わり、交渉は難航したという。

Ikebukuro3 地下道の入口は、民有地のビルの階段。「池袋近道」ってあるけど、考えてみれば、池袋駅からまっすぐ区道がのびているわけで、地上を歩いても、地下を歩いても、駅からの距離が変わらないことは言うまでもない。

むしろ、この地下道の存立理由は、別にあるのかもしれない。ここが、有楽町線建設当時、様々な反対運動があったり、地元の反発もあったりして、営団はかなり気を遣いながら、このルートの建設を進めたのだと思う。一方で、有楽町線の建設は急務だったので、路線変更して設計をやりなおす時間がない。

そんなわけで、地下道は、地元との折衝で出てきた妥協策のようなものだったんじゃないだろうかと、オイラは妄想した。

ところで、この地下道は、今、数奇な運命を辿ろうとしている。

何と、この地下道は、自転車駐輪場になる構想が持ち上がっているのだ。

地元の豊島区は、2005年4月に法定外税として、「放置自転車等対策推進税」を導入した。池袋駅は、都内でも放置自転車数のワースト1。区は、放置自転車を少しでも減らそうと、鉄道事業者に対して、駅の乗降客の頭数に乗じて「放置自転車税」を取り、その税を使って、放置自転車対策の資金にしようとした。

このとき、区は、放置自転車税を免除する規定を設けた。規定は、区内鉄道駅周辺において、区内に自転車駐車場を自ら設置・運営している者、 自転車駐車場等の用地を区に無償提供している者、 区の放置自転車等対策に対して特別に寄与していると区長が認める者という内容。1円でも払いたくない鉄道事業者は、あれこれと策を練って、自分の所有する土地で提供できる場所がないか考えた。

頭を抱えたのは、東京メトロである。地下鉄である以上、地上にはほとんど土地を持っていない。駐輪場として提供できる場所など、あるはずもなかった。

考えに考えた末に、苦肉の策として出したのは、この地下道だった。昼間に人通りも少ない、お世辞にも活用されているとは思えない、この地下空間。

そして、豊島区は、この地下道の無償提供を受け、概ね550台規模の駐輪場を整備することを計画に盛り込んだ。

閑散とした地下道が、駐輪場に生まれ変わる。有楽町線開業当時には、誰が想像できたであろうか。

 

有楽町線には、無駄が多いと思う。この路線が計画された時代が、そうさせたのかもしれない。高度経済成長期は、先の見通しが明るい時代で、あっちへ自動車道、こっちへ地下鉄と言った具合に、先々も考えずに様々な計画が立てられて、トンネルを掘る際に、いろんな前提が要求された。

例えば、護国寺駅。有楽町線建設史によると、建設当時、有楽町線が走る音羽通りと直角に交差する不忍通りに、有楽町線(8号線)の分岐線計画があったため、将来この路線と乗換ができるよう不忍通りと音羽通りにかけて駅を設置した。駅の形は、将来計画の地下鉄を中2階で立体交差が可能な構造としたという。

この8号線の分岐線、いつの間にか都市交通審議会の答申から消えた。護国寺駅には、そんなスペースだけが中2階に残されているわけだ。

桜田門駅。これは、秋庭先生が大好きなネタだけど、駅床上に将来地下自動車道路を設置可能な構造にしているが、地下自動車道路が通る見通しはまったくない。

有楽町駅。駅中心よりやや池袋側に、将来地下自動車道を設置可能なよう、駅地下2階部にスペースを確保している。B1が改札口のあるコンコース、B3がホームだよね。B2には、乗客用のトイレや変電設備とかがある。ここも、スペースだけ開けて、今も地下自動車道が通る気配はない。

豊洲駅。ここは、鉄道に詳しい皆さんならお馴染み、半蔵門線住吉方面に向けて、8号線分岐線を通すためのホームがすでにあるし、そのときのための留置線まで用意してある。この分岐線も、当分、実現しそうもない。

何が言いたいかというと、有楽町線建設当時に描かれていた未来の東京と、現在の東京というのは、あまりにもギャップが激しいということだ。前も、霞ヶ関と小菅を結ぶ護送地下鉄の話を書いたが、今から考えると少々無駄に思えることでも、当時なら予算が大盤振る舞いされるし、それだけのものを作るだけの経済成長もあった。ところが、現代になり、有楽町線は、駅設備やルートの前提となっている計画がことごとく泡のように消え、何となく不自然に空間が空いていたりするわけだ。

様々な都市伝説の温床となる理由は、こんなところにあるのではないかと思う。だから、秋庭先生も、存分にその不自然さを利用して、都市伝説を展開しているわけだ。

 

不思議な地下空間と言えば、有楽町線の新富町駅の出口を出た辺りで、かつての運河を埋め立てた空間に、ちょっと不思議な地下空間が広がっているのをご存知だろうか。上は公園、下は・・・・?秋庭先生は、この空間を「政府専用地下駐車場」と呼んでいたけれど、果たしてそれは本当なのか。謎を紐解くと、それは日本の道路行政の矛盾が象徴した地下空間だった。

次回の【秋庭系東京地下物語2007】は、新富町駅に停まります。

【秋庭系東京地下物語2007】

第1話 サンシャイン・シティの妄想

第2話 「極秘」護送地下鉄の妄想

第3話 水没した赤坂見附駅の妄想

第4話 区界の地下に流れる「川」の妄想

第5話 東京メトロ有楽町線の妄想

第6話 築地の運河跡にある「政府専用地下駐車場」の妄想

最終話 地下鉄サリン事件・霞ヶ関駅の真実

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コメント

こんばんは。天涯です。
毎度mori-chiさんの知識、調査力、わかりやすい解説に敬服しております。

しかし、秋庭系信者がこれ読んだら、反応はまた違ったものになるんでしょうね。こんな事実を否定しないことには、自らのレゾンデートルさえ危うくなる。秋庭さんなんかすっかり商業的事業としてやってるんでしょうが、なんか信者が哀れですな。ぼくのかつての姿でもありますが・・・。はよ目をさませ!

投稿: 天涯 | 2007年3月18日 (日) 23時32分

いつも読んでいただいてありがとうです。

お褒めいただき恐縮です。天涯さんところのビジュアル感と比べると、オイラんところは文字ばっかりで、今ひとつビジュアル的でありません。

まあ、これを読んで信者の皆様が、そっか、地下網はないのかって思うほど、マインドコントロールを解くのは簡単ではありません。結局は、自分の頭で考え、自分の目で見て、自分の耳で聞く、この積み重ねしかないのでしょう。

投稿: mori-chi | 2007年3月18日 (日) 23時55分

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