それでも、しつこく考える。2007年、「強い」の意味を。
もう、すっかり忘れている人は、多いだろう。メディアのせいだろうか、時間が経過するのが早すぎる。せめて、マイペースで更新できるブロガーは、自分の時間を大切にしたいものである。
大晦日のK1 Dynamaite!の秋山vs桜庭戦をめぐって、いろいろとあったのだ。覚えていない方は、過去の記事を読んでほしい。
もう、みんな、忘れているよね。メディアって、どうして、こうやって、過去を過去として、流してしまうんだろうか。
実は、すっごくクローズアップされた雑誌がある。
それは、ベースボール・マガジン社の『格闘技通信』である。
年明け早々に発売された『格闘技通信』の2月8日号(414号)では、昨年の大晦日に行われたK1の秋山vs桜庭戦を、“秋山時代の到来と、桜庭時代の終焉”という図式に描き、しかも、そのとき秋山さんのセコンドが、「滑らせろ!」と叫んでいたことを、「ローキックを滑らせるように打て」という意味だと、冒頭でわざわざ解説までしてしまったのだ。
ところが、原稿の締め切りを過ぎてすぐに、K1サイドが会見を開催。秋山vs桜庭戦は、秋山選手が体にクリームを塗ったために、ノーコンテストという結果を発表した。
最悪のタイミングだった。
時すでに遅し。店頭には、“秋山時代到来、さよなら桜庭”を最大限アピールした『格闘技通信』が、山のように積まれた。
原稿を書いたライターのブログはもちろん、『格闘技通信』の編集長ブログまで、大炎上した。
まあ、当たり前っちゃー、当たり前である。
『格闘技通信』翌415号(2月23日号)では、「検証!桜庭和志vs秋山成勲、幻のノーコンテスト」と題して、特集を組んだ。散々、秋山さん寄りに記事を書いておいて、「桜庭の主張は正しかった」と書く虚しさ。しかも、秋山絶賛ライターが、自ら釈明の記事を書く。
この試合のリポートは1月4日早朝に入稿したものであるということ。この時点でFEG側の公式見解は“シロ”だったため、秋山は塗っていないということを前提に勝者にスポットを当てて書いた次第だ。
その言葉(「滑らせろ!」のこと)をなぜ試合リポートの冒頭に持ってきたかといえば、一部でこのアドバイスに対して疑いがかけられていたからだ。結果的にあまりにもタイミングが悪くなってしまったが、そうすることで山田トレーナーにかけられた疑いを晴らしたかった。
気持ちは分からないでもない。筆が走りすぎることは、よくあることだ。でも、あんたは、日刊紙のライターではないはずだ。大晦日から、1月4日までの時間が与えられていたはずだ。あのとき、桜庭さんの表情は、尋常ではなかった。テレビを観ている誰もが、桜庭さんにしてはおかしい、と感じたはずだ。そういう現場の空気をちゃんと受け止めていれば、あんな滑稽な秋山礼賛の記事なんて、書きたくても書けなかったはずだ。書けたのは、あなたの目が節穴だったか、あなたが意図的だったかどちらかだろう。
その号では、書いた本人も交えた緊急座談会が掲載されている。
秋山選手がシロだと信じて試合リポートを書いた私は悔しくて仕方ない。
そりゃ、そうだろうが、あの時点で、秋山選手をシロと信じることができたなら、かなり冒険者である。オイラが、同じ立場で試合をリポートすれば、やはり、「何かおかしい」と書かざるを得なかった。恥ずかしいくらい持ちあげて、“秋山時代到来”を書くことなどできなかっただろう。試合の直後の、会場の異様な雰囲気を直に感じ取っていたライターが、素直に秋山時代到来を記事に出来たとしたら、ある意味、優れた勇気の持ち主と言えるだろう。
「強い」って、何だろうね。
仮に、である。
秋山さんが、不正がなかったとしよう。桜庭さんをボコボコに殴って、勝利したとする。あのとき、敗者の桜庭さんに対して、試合終了後に挨拶もせず、お互いに讃え合うこともせず、しかも、柔道着を着ずに殴り続けておいて、「柔道って強い」と豪語したこと。あれは、格闘家として、正しい姿だったのだろうか。『格闘技通信』は、それでもやはり、秋山最高と記事を書いたのだろうか。
格闘技ってのは、勝てばいいのか。相手をボコボコにすればいいのか。
違うだろ?
マスメディアが、あの試合に、いっさい異議を唱えることができなかったという事実に、大きな失望を感じた。TBSは、二度と格闘技なんて、放映すべきではない。不快だ。
『格闘技通信』の三次敏之編集長が、「巻頭コラム」でこう語っている。
答えてくれるかどうかは別にして、秋山に直接聞きたかったのが、彼は勝利した直後にマイクアピールで「柔道最高!」を口癖にしている。ここまで口にするくらいなのだから、武道精神あるいは、スポーツマンシップがある人間だと思われるのが普通である。その辺りを彼がどのように思っているのかを確認したかった。自分が思われていること、自分がどれだけ多くの人間に見られているかという部分においても、彼は欠落していたと思うしかない。
今回、格闘技会が負ったダメージは大きい。こういう選手が現れてしまった以上、より選手の管理・監督をする義務が生じたわけだ。視聴率重視のマッチメイクを組みたい気持ちも分かるが、今後は選手の安全・管理や指導もしっかりと強化していかなければならないだろう。話題優先主義はお休みしてもいいと思う。
その言葉、『格闘技通信』に、すべてお返ししたい。
あの試合を、秋山時代到来と捉えることなんて、何か意図がなければできないことだと思う。
この話は、まだ1月の頃のネタ。急遽、特集を組んでしまい、ネタを放置してしまったけれど、最近、また話題が薄れてきたような気がしたので、あえて、今夜、この話題を書いてみた。
「強い」って、なんだ?
格闘技界では、勝ちゃいいのか?
書く側からも、問いたい。
「強い」って、なんだ?
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