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2007年1月31日 (水)

【秋庭俊先生応援企画】『帝都東京・隠された地下網の秘密』がトンデモ本って、マジっすか?2

沈黙の数ヶ月が過ぎた、昨年12月のある日。本屋の新刊コーナーに、ひっそりと秋庭俊先生の新刊が並んだ。それが、『大東京の地下99の謎』(二見文庫)であった。発売日は、12月25日とあるが、すでに12月初旬には本屋に積まれてあったと思う。が、発売日を過ぎても、秋庭先生本人から、本の発売を告げる言葉はなかった。ただ、公式サイトのトップページに、発売している旨と表紙の画像だけがひっそりと更新されていた。

この『99の謎』は、前作を上回る異様な形式で書かれていた。根拠なしに政府の陰謀論を煽るあたりは、秋庭先生ならではのノリだったが、地下鉄の制限速度がどうだとか、地下鉄のトンネルにもクーラーが効いているとか、地下鉄にも踏切があるとか、陰謀論とは何の関係もない、ただの地下鉄マニア向けの情報が混ざっているのだ。これまで、問答無用の秋庭式に慣れていたオイラたちには、正直言って、拍子抜けする内容だった。

と同時に、オイラは、この本を隅々まで読んでみて、あることに気づいたのだった。

秋庭先生は、自らの理論を貫き通すのに、壁にぶち当たってしまっているのではないか。

オカルトの大王のような秋庭先生に、果たしてそんなナイーブな側面があるのかどうか疑問だが、少なくとも秋庭先生は、この本を通じて、ジャーナリストとして、自らの理論に対して精一杯の軌道修正を行っており、その結果、余計に自らの理論に無理が生じてしまっているのではなかろうか。

例えば、「4 毎日新聞社が入るパレスサイドビル、地下6階の謎」である。

公表されていないが、実は、地下7階まであり、そこには、印刷部員のための大浴場があるという。真偽のほどは定かではない。(P20)

実は、このネタは、洋泉社発行の『帝都東京・地下の謎86』に初登場したネタである。このときは、「02◆パレスサイドビルの地下七階には大浴場がある」というタイトルだった。

パレスサイドビルには地下六階までしかないことになっているが、実は、このビルには少なくとも地下七階があって、地下七階には印刷部員のための大浴場があるのだという。(P16)

勘の良い人はもうお分かりだろうが、『86』では、地下7階のことを書いているのに、『99』になったら、地下6階が謎だといい、地下7階については「真偽のほどは定かではない」とおっしゃっている。

これは、オイラの妄想だが、秋庭先生はすでに、パレスサイドビルに地下7階がないことに気づいているのではないだろうか。それが取材の結果なのか、誰かが教えてくれたのかは分からない。ビルには確かに、社員用の大浴場があって、新聞記者もそこを利用している。でも、地下7階ではない。そんな、普通に調べれば分かるような事実に、秋庭先生はあっけなくぶつかってしまい、自らの主張の後退を余儀なくされたのではないか。

もう1つ例をあげてみよう。

『帝都東京・地下の謎86』の「03◆東京ドームの下には競輪のバンクがある」。

後楽園では以前、競輪が行われていたが、いまの区長はもう許可しないと明言している。にもかかわらず、東京ドームのグラウンドの下には、競輪のバンクが完成しているのだという。(P18)

「完成」というのがポイントである。

その後、昨年9月11日付で、秋庭先生の公式サイトの「近況報告」には、こんな文章が登場している。

文京区は競輪の復活に反対していますが、なぜか東京ドームの下には競輪のバンクが完成していて、この話は以前『地下の謎86』でも取り上げたので、ご存知の方が少なくないと思います。今回、東京都がオリンピックに立候補し、見事当選したあかつきには、この地下のバンクで自転車競技が行われるということです。これでツジツマが合ったのかどうか知りませんが、ここで問題なのは、すでにバンクは完成しているため、建設費はかからないということではないでしょうか。

やはり、「完成」というのがポイントである。

さて、ここまで押さえた上で、『大東京の地下99の謎』の「60 東京ドームの地下にある競輪バンクの謎」を読んでいただきたい。

競輪場の跡地には、日本初の屋根つきドーム、東京ドームが誕生した(1988年)。このとき、競輪場は消えたはずだったが、東京ドームが建設される際、その地下に競輪バンク(組み立て式トラック)もつくられたのである。(P141)

この項目全体で、「完成」という単語は、一度も登場しない。秋庭先生は、もしかして、競輪バンクが完成されたものではなく、組み立て式だという事実を、どこかの時点で知ってしまったのではないか。

そもそも、この話、そこにはかつて丸い地下構造があったらしい、だから上にも丸い建物が建ち、その下にもやはり丸い構造物がつくられた、こういうのを地下処理って言うんだよ、というストーリーがあるからおもしろいのであって、地下にあるものが丸くなく、丸くなる以前の部品が収納されているだけということになったら、おもしろくも何ともないし、謎でも何でもない。

秋庭先生は、どこやらのブログを読んでしまったのか、それとも誰かにこっそり教えてもらったのか、はたまた、綿密な取材力でそれを解明したのか、そこまでは分からないが、これまで自分が変なことを口走っていたことに気づいてしまったんじゃないだろうか。でも、今さら引っ込めるわけにもいかず、こうして無理な展開を残さざるを得なくなってしまった。

こうした軌道修正は、これまでの一連の著作でもたびたび行われた。その際は、修正しても話の筋は通ったものだった。その修正をしても、自分の結論を曲げる必要がない程度のものだったのだ。例えばそれは、『地下網』が洋泉社版から新潮文庫版へと変わるときにも行われたものだった。

ところが、今回は違う。事実にぶち当たってしまったことで、秋庭先生が言っていること自体、訳が分からなくなってしまっているのだ。

地下7階の話を始めたのに、地下6階が謎だと言う。競輪バンクは謎だと言っているのに、組み立て式で収納してあるという、別に何の変哲もない結論。

この本は、明らかに、何かが狂い始めていた。

(つづく)

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