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2005年10月 3日 (月)

突然ですが、谷口深雪さんとの出会い

彼女との出会いは、2003年夏、忘れもしない、横浜である。7月末、高田馬場でイズミカワソラちゃんのライブがあったとき、販売コーナーにいたスタッフH氏が、例によってアロハ姿で背後に現れ、1枚のチラシを私に見せた。

「こんなの、どう?」

そのチラシには、ボーイッシュな女の子が、無愛想に前を向いた写真が入っていた。

「ソラちゃんと比べて、どんな感じですか?」
「タイプが違うから、比較にならないな」

無愛想な女の子、彼女の名は、谷口深雪。8月に横浜のランドマークプラザでライブがあるというので、「気が向いたら行きます」と返事していた。行く気はなかった。

ライブの日は、ちょうど会社の夏休みの初日にあたり、どこに行くという予定も立てずに、家でボケッとしていた。ふとテレビに目を移すと、天気予報でおそらく当時では史上最大級の大型台風が関東に上陸しようとしていることが分かった。そのとき、ふと私の脳裏に浮かんだのが、ランドマークプラザでのインストアライブだった。この嵐の日に、インストアライブとは、運の悪い子だなあと同情した。と同時に、そんな悲惨なライブも、一度観てみたいという好奇心も沸いてきた。私は、台風が迫る中を横浜線に乗り、桜木町へと向かった。

案の定、ランドマークタワーの周辺は、台風の直撃を受けて、突風が吹き荒れ、桜木町からランドマークタワーに向かうまでに、びしょ濡れになった。土曜日なら人であふれかえるランドマーク周辺が、閑散としていた。ライブ会場となる新星堂前に到着すると、いつものように、H氏の「長すぎるトーク」がスピーカーを通して聞こえてきた。「ああ、やってるじゃないか」と、店の前までたどり着くと、エスカレーターから降りてくる1人1人に手配りでチラシを配っている女の子がいた。あの無愛想なチラシの娘だった。突風で髪はグシャグシャで、チラシも濡れていた。

会場には、5人程度しか客がいなかった。関東初のインストアライブに、超大型台風。彼女の宿命は、このときすでに始まっていたのかもしれない。

ライブは、立ったままキーボードを引くという、あまり観たことのないストリート形式。始まる前に、「椅子がないぞ」とツッコミを入れそうになった。しかも、これっきりだったが、プロデューサーのT氏がギターのサポートに入る。歌ったのは、「ピース」を除いて、ファーストアルバムからの曲。とにかく、ガンガンと腕を振り下ろし、キーボードがグラグラと揺れる。歌声よりも、殺気というか(笑)、「聴け!聴け!」という気合いが飛んでくるという感じがした。がむしゃらに音を叩いている感じがしたが、とにかく一生懸命でひたむきに歌う姿が印象に残った。その中で1曲だけ、彼女なりに完成された歌だと思ったのが、「雨のあとは」。そのほかの歌は、正直言って、海の物とも山の物ともよく分からない、という感じだった。

嵐の中をライブに来たのだから、CDくらい買って帰ろうと思った。CDにサインをしてもらうとき、谷口ちゃんが、「初めてですか?」と聞くので、「はい」と答えると、「うっしゃ!」と意味不明の気合いを入れていた。

この原石を磨くと、どんな風に輝くのだろうか?

そのとき、そんなことを感じていた。

もしも、あの日、台風が来ていなかったら、私は横浜に向かうことはなかっただろう。彼女の歌声が、本当に私の心まで届くようになるには、それから何ヶ月もかかった。あの頃、会社の仕事に没頭していた私は、いつしか仕事よりも自分の時間を大切にするようになり、ピアノ弾き語りのライブに顔を出すことが多くなった。谷口深雪も欠かせぬアーティストの1人となっている。今ある時間は、もしかすると、あのときから始まっているのかもしれないと思うことがある。

彼女にはどうでもいいことだろうと思うが、いっしょに歩いている気がする、そんなアーティストの1人かもしれない。

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