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2005年10月28日 (金)

恋人がリストカットをしていたら…

もう、出会って、7カ月くらいになる。きっかけは、会社の後輩の紹介だった。職場の近くにある小さな日本料理店で、沖しゃぶを食べた。彼女が、インターネットで検索して調べてきたお店だ。

最初、正直言って、結婚とか恋愛を前提として異性に会うのが、煩わしかった。そんなパワーもエネルギーも精神も消えてたから。でも、「友達としてでいいから」という後輩の言葉で、「とにかく会ってみよう」ということになった。

彼女の第一印象は、ケバいというか、とにかく、黙っていればどんどんしゃべる人で、「がははっ」と笑う、その大きな口が印象に残った。初対面だったからかもしれないが、とにかく、彼女の表情は緊張していて、こわばっているようにも見えた。

「まいったな。ずいぶん、一方的に元気な人だな」と思っていた。

沖しゃぶを食べた後、後輩が気を利かせて、先に帰った。オイラと彼女は、駅の近くに何十年も前からある古びたカフェで、カウンターに横並びに座った。対面して話していたときと比べると、彼女は急に大人しくなり、言葉少なに紅茶を飲んだ。

彼女は、静かに自分の生い立ちを話した。彼女には、離婚歴があった。夫は暴力をふるうDV男で、夫から逃げて、生活保護を受けながら1人で暮らしていた。オイラと共通していたのは、アダルト・チルドレンだということ、両親とは決別していたこと。

彼女は、ふと自分の左腕の袖をまくった。そこには、何本、いや何十本ものリストカットの跡があった。オイラは、目を背けずに、ただジッとそれを見つめた。

痛いっ…と思った。

自殺願望は、オイラだって持ったことがある。でも、リストカットは、同じようで、同じではなかった。言葉にはならない、怒りや悲しみや憎悪が詰まっているような気がして、それとどう向き合ったらいいのか、自分には分からなかった。

その日以来、彼女はたまに、オイラのライブ観戦にもつきあうようになった。でも、彼女をどう受け入れたら良いのか、自分には分からないままだった。

2カ月くらいは、そんな関係が続いたが、いつの間にか彼女は、家に引きこもってしまうようになった。「1人にさせてください」とメールが来た。引っ張り出そうとすれば、引っ張り出せたかもしれないが、自分にできることは何もなさそうだった。オイラは、彼女からの連絡を待つことにした。

そんな彼女にもう一度連絡したのは、夏が過ぎて、9月のことだった。まだ暑い最中、オイラは、ひょんなきっかけで彼女のことを思い出していた。メールのやりとりが何回も続き、ある日、久しぶりに会った、すっぴんの彼女は、またリストカットの傷口が増えていた。真新しい傷もあった。友達の結婚式をきっかけに、再発したらしい。

オイラは、黙って彼女の話を聞いていた。

「やめろ」とは言えなかった。彼女の元夫は、殴ってでも止めさせようとしたそうだ。

「がははっ」と笑う彼女の笑顔は、相変わらずだった。

自分に出来ることは何もないが、そばにいようと思った。オイラは、カウンセラーでもなければ、精神科医でもない。ただの男だ。でも、彼女は、自分にとってはかけがえのない、大切な人だった。

あなたなら、大切な人が、例えば、恋人がリストカットしていたら、どうするだろうか。オイラは、もしかすると、ひどい人間なのかもしれない。まだ、彼女の傷口と真正面から向き合えていないのかもしれない。

心配することと、愛することは、別の感情だということ、何となく、そんなことを考えている。オイラは、彼女を心配したいわけでなくて、愛したいだけなんだ。だから、オイラは、とことん、彼女を愛してあげたいと思っている。

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