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2005年9月29日 (木)

麻里鈴と走り抜けた時代

こんな風に、眠れない夜がある。

大学に入学して間もなく、そんな夜が続いていたことがある。深見じゅんさんの漫画『悪女(わる)』の連載がスタートしたばかりで、ちょうど同じくらいの年齢の主人公・田中麻里鈴が、一人暮しの大人の嗜みとして、寝酒のバーボンを飲んでいたのにあこがれて、毎晩寝る前にウィスキーを飲んでいたのだ。飲んだからといって、眠りが深くなるなんてことはなかったが、その習慣そのものがかっちょいいと思っていたのだろう。麻里鈴は、ボトルにメモリを書いて、毎晩1メモリずつ飲んでいて、会社でイヤなことがあるとボトルを空けてしまっていた。私も同じで、メモリを守ったのは最初だけで、だんだん一晩で飲む量も増えてしまった。

麻里鈴は、私の憧れのOLだった。成績が悪くてコネで入社して落ちこぼれだけど、頑張り屋さんで行動力があり、敵もいつかは彼女の味方になる。何より、酒屋の娘らしく、素晴らしい大酒飲みだった。私は男だけれど、あんな風に頑張れたらいいなと、いつも憧れていた。漫画の連載は、ついに私が今の会社に入社するまで続き、私が会社を生き抜いていくバイブルとなった。
だから、私の大酒飲みのモデルとなったのは、麻里鈴と言って差し支えない。仕事にせよ、人間関係にせよ、私は麻里鈴ゆずりの、かなりの「悪男(わる)」だったに違いない。麻里鈴と違うのは、彼女は最後に憧れの王子様と結ばれて結婚するのだが、私は燃え尽きて、空っぽになったということだ。

酒を飲んでいたころ、特に最後の2年くらいは、毎晩のように居酒屋に入り浸って、浴びるように酒を飲んだが、さっぱり酔えなかった。帰宅してからすぐ布団に入っても30分程度で目が覚めて、あとは寝苦しい退屈な闇が延々と続くばかりだった。「こんな生活も、もう終わりかな」と思うようになった。酒が切れて眠れない夜ほど情けないものはない。

大酒飲みの麻里鈴は、どんな夜を過ごしていたのだろうか。今、田村くんとは幸せに暮らしているのだろうか。私は、今でも『悪女』を読み返すことがある。あのころの私には、もう戻れない。

何故か眠れない夜を迎えると、私は、麻里鈴と走り抜けた時代を思い出して、戻ることのない時間を後悔している。

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