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2005年9月23日 (金)

小悪魔によろしく

ゴールデンウイークの休日を挟んだ平日、昼間、とりとめて仕事もなかったものだから、彼女のケータイに電話してみた。前から、一度一杯飲みながら恋バナしようよと約束していたのだ。

吉祥寺で夕方に待ち合わせたものの、まだ居酒屋が開くには早すぎたので、井の頭公園をブラブラと散歩した。女の子と二人して夕暮れの公園を歩くのは、なんだか久しぶりのシチュエーションで、照れ臭かった。

「もりちさんって、どんな恋愛する人なんですか?」
「う〜ん。いろいろと外堀を埋めて、さあ、射止めるぞって感じ?(笑)」
「恐い(笑)」
「そうかな…(笑)」
「そうですよ(笑)」

吉祥寺駅北側にある東急百貨店の裏側あたりに、モダンなビルの階段を最上階まで上ると、私のお気に入りの居酒屋がある。彼女は、まず焼酎のストックに大感動し、さらにメニューから砂肝の刺身を見つけると、目をハート型にして無邪気にはしゃいだ。

「これは重要ですよ!」

彼女の恋バナは、私の遍歴をはるかにしのぐ、凄まじい戦歴だった。

一番最近の恋愛は、大工とだった。居酒屋でナンパされたという。ある日、彼の家に連泊したとき、1日目は、彼は仕事を終わるとすぐに帰宅し、彼女の料理を美味しそうに食べていたが、2日目は、いつまでたっても帰って来ない。料理だけ用意して待っていると、彼はほろ酔い気分で帰ってきた。会社で同僚に誘われて飲んでいたらしい。

「何か勘違いしてるんですよね。夕食つくって待ってる私は何?みたいな…」

彼は、ある日、突然何百万円もする腕時計を彼女にプレゼントした。あまりに極端なプレゼントで彼女は受けとれなかった。悪い男ではなかったが、不器用でちぐはぐだった。しばらくすれ違いが続いて、「別れる?」というメールが来たので、「いいよ」と返して、それっきりだったという。

「じゃあ、今は、彼氏いないんだ?」
「……(笑)」
「なんだ、もういるの?」

やはり、出会いは居酒屋だったらしい。

「ノリは軽い人なんだけど、話をすると、すっごい深い考え方をしてるんですよね」
砂肝をかじりながら、彼女は遠い目をした。

「で、君は、その彼氏には、もう食べられちゃったわけだ」
「食べるって…(笑)」
「まあ、その話しっぷりからすると、食べられたのかなと」
「てへっ…」

彼女は焼酎のお湯割をぐいっと飲み干した。

帰り道、彼女はふと、こんなことを口にした。

「もりちさんとは、恋愛しないだろうなあ」
「えっ、なんで?」
「だって、恐いもん」
「……」
「あれ、ショックでした?」
「いや、そうじゃないが…」
「砂肝おいしかったですねえ」

街のあちこちでは、ストリートミュージシャンが、ラブソングを奏でていた。

もう、4年も前の話になる。私はアルコールを断って、もう1年10ヵ月になる。最近結婚した彼女は、旦那が帰ると、冷凍庫で冷やしたグラスを出してきて、ビールをなみなみとついでくれるそうだ。

「断るとすごく悲しい目をするんですよ」

小悪魔によろしく伝えてほしい。あの恋愛観は、私がかっこつけて言っただけで、本当は、射止めるとか、外堀を埋めるとか、器用な男じゃないんだ。待ち続けて、待ち過ぎて、結局食べそこねてしまう、不器用な男なのである。

烏龍茶で乾杯。

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